日本は戦後80年、戦争をせずにやってきた。だが国際情勢は「最悪の渦」を作りつつあり、いつ日本が戦争に巻き込まれても不思議ではない状況に入りつつある。その中で、まだ戦争体験をもつ世代が多数を占めた時代は明確に抑制されてきたものが、いまはその「重石」が外れてしまった状況に映る。私が危惧をするのはやはり防衛費2倍増を決めたときの自公両党の動きだ。公明党は「物分かりのよさ」を発揮し、大した抵抗も行わず、むしろ自民党議員のほうから「(公明党がもっと抵抗すると思っていたので)拍子抜けした」旨のコメントが新聞掲載されたほどだった。実際この問題をめぐり、党内全体で喧々諤々の議論を行ったとは耳にしていない。要するにロシアのウクライナ侵攻という驚天動地の出来事とそれに伴う世論の前にひれ伏したといったほうが正確だろう。同時にこの政治決定は、党内支持者にも広く説明されることなく、済まされてきた。要するに都合の悪い言動は自分からは周知しないという態度を鮮明にしていた。こうした移り変わりやすい行動をとってきた政党が、いざというときに抑制的に機能できるだろうか。漆原良夫氏が平和の面でも「旗が見えない」と喝破したのは、そうした現実の行動を指した上でのことだろう。非常に危うい時代に入るという認識が必要と感じる。