ライバル企業を洗え

仕事上さまざまな人の影響を受けてきたが、まだ20代の当初に文章の書き方から人生万般まで指導を受けたのは西日本新聞社出身で大宅壮一門下として活躍した大隈秀夫先生(1922-)である。その教えの一つに、Aという会社や団体を取材しようと思ったら、ライバル会社のBに聞け、というのがある。ライバル会社や団体は相手の情報を必然的に熱意をもって収集するので、そこに相手のさまざまな情報が集積されているという理屈からだ。その意味で戦後まもなくの時期から創価学会・公明党の情報が多く集積されたライバル団体の一つが、日本共産党や新宗教団体だった。当初、学会ものの出版を行った書き手が頼ったのはそのとおりで、日本共産党や同党系列の人脈から情報や資料を入手し、書いたものが多い。最近はこんなことがあった。地域でつながりのあった年配の男性がいたのだが、あるときその人の訃報記事がしんぶん赤旗に大きめの扱いで掲載されていた。赤旗ではペンネームで活躍していたようで、そのため私は何も気づかないでいたのだが、その訃報記事で私の知るその人の実名とともに、ペンネームでの活躍の様子が掲載されていた。そのような「裏の顔」をまったく知らなかったので、亡くなった後にむしろ驚いたということがあった。また本日付の東京・朝日新聞では、プロレタリア作家として知られる早乙女勝元氏の訃報記事が掲載されている。しかし同じ日のしんぶん赤旗には1行も記事がない。単なる「特落ち」か、晩年になって党との関係が悪化したのかはわからないが、ともあれ、ライバル企業やライバル団体を洗えというのは、いまも取材の基本的な鉄則の一つではあるだろう。

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