極右と極左の類似状況

“一枚岩”を看板としてきた日本共産党に大きな亀裂が入ったのは2023年、同党内の2人の党員をかなり強引に除名したことに始まる。それまでも異論を排除するということは宮本体制時代から変わらず続いていたが、SNSの普及する現代においてはもはや情報の流通を止める手段はなく、同党の一挙一投足が衆人環視の状況で可視化され、批判される時代となった。かつてなら「強者の論理」で少数異論を抑え込むことは十分に可能だったが、もはやそれができる時代でなくなったことを示している。一方で、極右の内ゲバも今年になって激しくなった。象徴的な事例は右派言論雑誌の月刊『Hanada』などが安倍元首相の死去後、主役不在の状況で宣伝主体として目をつけ、大々的にバックアップしてきた日本保守党の存在だ。きっかけは昨年4月、同党にとっての初の国政選挙への挑戦となった衆院東京15区補選に擁立した同党の飯山陽候補への党内扱いがひどく、選挙後、飯山本人と同党代表の百田尚樹、事務総長の有本香らとの関係が悪化。右派陣営ではどちらに付くかで色分けがなされ、現在では右派言論雑誌も共通して「反日保」で固まっている状況だ。事実上の百田新党は右派言論雑誌という強力な応援団を軒並み敵に回す形となり、もはや自分たちの「熱烈信者」らを囲い込む戦術しか残っていない状態に見える。要するに極右勢力にとっての「主役不在」の状況が可視化された状況といってよい。極左も極右も分裂状態にあるのは似通っているが、もともと右翼はバラバラの勢力であり、安倍晋三という“時の主役”を得て、しばらくはまとまりをもっていたにすぎない。その緩やかなまとまりの形が、ここにきて束ねていたヒモが一挙にほどけ、ここかしこで紛争を始めた状態ということのようだ。これらの状況はしばらくつづくと見られる。

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