安倍元首相の歴史否定を継承する自民党新総裁の誕生だ。高市早苗新総裁は第2次安倍政権が発足した1年目、党政調会長の立場で戦争の加害責任を認めて謝罪した村山談話(95年)を批判し、「侵略という文言を入れている村山談話は、私自身はあまりしっくりきていない。自存自衛のために決然と立って戦うというのが当時の解釈だった」などと述べ、朝日新聞の社説(2013年5月15日付)で直接批判されることにつながった。旧日本軍が中国をはじめ、アジア諸国を“侵略”し、「多大の損害を苦痛を与えた」ことは明らかな歴史的事実だ。だがこうした史実を認めることができない勢力が日本には一定数いて、安倍政権の存続とともに草の根で急拡大してきた結果がいまの日本社会の現状につながる。いうなれば、安倍政治が遺したものが生んだのが高市新総裁ともいえる。今回の自民党総裁選は任期途中で行われたものであり、政治空白を避けるために簡易型で行うこともできたはずだが、そうはならなかった。日本会議の意向が功を奏したともいえる。もし簡易型で行われていれば、別の人が選ばれた可能性が高い。冒頭の話に戻ると、昭和の戦争において「加害」と「被害」の両面があった中で、「加害」の中心ともいえる「侵略行為」を認めない政治指導者はやはり異常としかいいようがない。歴史観という人間の中心軸が狂っている政治家が、本質面において正しい成果を残すとは私には思えない。