現在、元共産党職員の松竹伸幸氏と日本共産党との間で争われている党員としての地位確認訴訟(除名処分無効請求)で主な争点となっているのが部分社会の法理と呼ばれるもので、政党内部の問題に司法審査は立ち入れないとする原則だ。だがこの部分社会の法理と呼ばれる概念は日本独自のもので、いまや時代遅れの産物と指摘する学者の講演を聞いた。同氏によれば、日本の憲法学者でもこの法理に賛同する人は少数で、いわゆる学説上の「少数説」にすぎない。これまで日本では大学、地方議会、政党などでこの法理が適用されてきたが、すでに地方議会ではこの法理を突破する判例が出て、次は政党かと見られている。この裁判の大きな意義の一つとみられる。同じことは宗教団体についても同様で、公正さを欠く処分などを行った場合、司法審査が入る余地は十分にある。そのため、宗教団体で会員を除名する場合も、本人の聞き取り調査を十分に行うなど、配慮を行っているのが通例のようだ。つきつめると、個人と組織団体のどちらの権利を優先するかという問題にもつながるが、日本国憲法の概念は前者に求めるべきというのが学者の主張だった。ともあれ、日本共産党という一つの政党の問題ながら、この件の判例がこんごの多くの裁判に影響を与える。来年後半には一審判決が出る可能性がある。