フジテレビと日本共産党

現在世間を騒がせているフジテレビ問題の本質を単純化すれば、会社の利益のために社員の人権を守ることができずむしろ犠牲にしてしまったという社内風土の問題だろう。捻じ曲がった全体利益のために、個々の利益が押しつぶされた構図ともいえる。このようなことは実はどの世界でも往々にして見られる。私がすぐに思い出したのは昨年1月の日本共産党大会での出来事だ。この場合は会社ではなく政党だが、政党の利益(=権力維持)のために、一人の代議員が衆人環視の下で公然と吊るし上げられるという酷い出来事だった。明らかにパワハラに該当するとのSNS上の圧倒的多数の意見を無視し、日本共産党はこの件を第三者委員会にかけていない。一般社会では、フジテレビの事案のように公正な形の第三者委員会にかけて客観的な裁定をしてもらったほうが、世間的にはダメージは少ない。逆にそうした手段を避けることにより、傷口を広め、いまも回復しないままずるずると状況を悪化させているのが同党の事例ともいえる。ただし第三者委員会の裁定に委ね、厳しい指摘がなされれば、それはそのまま党最高幹部の直接責任として跳ね返ってくる可能性が高いため、進退問題につながる事態を避けられない。そうした事態を回避するため、党最高幹部らが姑息な行動を取り続けていると見られているのが現在の状況である。いずれにせよ明確に言えることは、自分の組織(会社であれ政党であれ何の団体であれ)の個々の構成員の人権すら守れない組織に、世間の信用は得られないという事実だ。また組織内部の信頼性も生まれない。日本社会の人権意識の低さを転換する一つのきっかけになったという意味では、フジテレビ問題は意味のある不祥事に映る。

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