権力欲に溺れたケース

首相の通算在職日数で「憲政史上最長保持者」を記録した安倍元首相。同首相が2017年以降に残した政治的遺物を振り返る時、権力者は引き際が大事であることをつくづく思い知らされる。過度な権力欲をもつ人間でなく、2017年に首相を辞任していれば、いまよりも歴史的に評価されたことは明らかだったと私は確信する。なぜなら2017年から始まった森友・加計学園問題での国会虚偽答弁は139回、さらに2019年からの桜を見る会を巡る国会での虚偽答弁は118回、“希代のデマ答弁男”の名を歴史に刻むことになったからだ。さらに最後は行政府の長が司法権の一極を乗っ取ろうと謀った「検察庁法改正案」を企画し、意図を察した市民らによって潰された。安倍元首相が辞任表明する3カ月前の出来事である。つまるところ2017年以降の3年前後は、同政権はメタメタだった。政治的功績も、正と見るか負と見るかで見解は分かれるが、大きな遺産は2019年の消費税10%上げくらいなもので、本人が最も成し遂げたかった憲法改正などは手つかずのままの辞任を余儀なくされた。加えて2017年のうちに辞職していれば、翌年の大阪財務局職員の自死も起きなかった。これらは一人の人間の「過度な」権力欲が引き起こした出来事にほかならない。

話は変わるが、昨日の自民党大会で石破首相は夏の選挙に向けて雄叫びをあげた。これまであまり権力者の感じがしなかった首相が、ようやく権力者の顔を見せ始めた。首相はそうでなくては務まらない。あとはその権力をどう使いこなすかだろうが、このコラムで何度かふれているように、「防災立国」政策の着実な推進を念願する。過去の虚言にまみれた安倍政治(歴史認識を含む)を一掃し、新たな日本の時代を切り開く架け橋となられることを念願する。

トラックバック・ピンバックはありません

ご自分のサイトからトラックバックを送ることができます。

現在コメントは受け付けていません。