政治は権謀術数が渦巻く世界だ。現在、まだ首相にもなっていない人間が衆院解散に言及するのはおかしいというもっともな主張が増えている。それでも政治の世界は権力を得て、自らの政策を実行・実現することに本義があるのであって、そもそも権力を維持できなければ政策実現はゼロに近くなるという意味において、私は早期解散を支持する。首相は解散についてはウソをついていいという不文律と同様だ。むしろ個人的に問題だと思ったのは、自民・公明の政権合意において、肝心な箇所が入っていないことだ。一つは選択的夫婦別姓の導入である。これは石破新総裁も公明党側も推進の必要性を認めているものだが、反対勢力が多いと思ったのか、敢えて明文化していない。これでは最初から「この政権ではできない」「申し訳ないが今回は諦める」と内外に宣言しているようなもので、この政権には期待がもてないということにつながりかねない。現実に目の前に困っている人がいることが明らかな状況なのに、世論や反対勢力をおそれ、逃げるような姿勢では、信頼はされない。「正面突破」で臨むべきだった。もう一つは石破新総裁の大きな公約ともいえる「防災省」の設置だ。公明党は「司令塔としての防災庁設置」(岡本政調会長報告)と主張しているようだが、これこそ石破政権が残すべき重要な政策課題というべきものだろう。今後とも災害が増えることはあっても、減ることはないと見られるからだ。だがこれも明文化されなかった。こうした姿に、政権の本質的な「姿勢」が滲み出る。石破総裁と石井代表はその頭をとって「石石コンビ」ともいわれているが、石橋を叩いて渡る方式では、政策実現は遠のくばかりだ。