事実を軽んじるジャーナリストの価値

1年後の11月5日に米国大統領選が行われるので、日本の全国紙もチラホラ関連記事を掲載している。最近は「『トランプ大統領』再来に備えよ」(10月31日付産経)や「『トランプ再選』に備える」(11月2日付日経)など、トランプ再選への保険を掛けるような記事も目立ったが、本日付毎日新聞は詳細な分析記事を掲載、第3の目となる候補の動きも追っている。トランプ前大統領といえば、安倍元首相との密接な関係性がよく知られた。大統領就任前の同氏のもとを最初に訪問した世界の首脳は安倍氏であったし、大統領就任後も主に外交分野などで安倍氏にしばしば助言を求めた関係としても知られる。日本の歴代首相の中でそのような際立った働きをした政治家はほぼいなかったので、日本の「安倍信者」は大いに歓喜し、胸を張った。そのためトランプ大統領のことを「身内」のように感じていたのだろう。トランプのもつサイコパスと思われる詐欺的側面に目をつぶり、3年前の大統領選におけるトランプ・デマを意識的に打ち消し、トランプが勝利したと日本でわめき散らしたのが作家の百田尚樹、ジャーナリストを称する有本香、門田隆将といった面々だった。特に後者の2人は「ジャーナリスト」を称しながらも、この顛末についてなんら自らを総括すらしておらず、責任逃れもはなはだしい。特に門田にいたっては、安倍心酔の心情のあまり、統一教会と安倍氏との関係においても事実と逆のことを繰り返し発信し、彼にとって「事実」なるものはどうでもよい道具にすぎないことが明らかとなっている。いうまでもなく、ジャーナリストにとって最大の生命は「事実」である。だが、彼にとってはそれはとるに足りない些末な対象にすぎないようだ。安倍という特定の政治家に「心酔」するあまり、物事が見えなくなったこのような人間を考えるとき、私はかつて共産主義の原理に心酔するあまり、ソ連や中国、北朝鮮を「地上の楽園」のように礼賛し、錯覚した人びとを想起する。

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