ノンフィクションの陥穽

ノンフィクションは事実を用いた文芸である。小説と違って虚構や創作は持ち込めないものの、すでにテーマ設定の段階で執筆者の「意図」といったものは反映されている。その意味では完全に客観的な文芸ともいえない。客観を装った一つの物語といってよいかもしれない。その意味では執筆者の境涯のようなものが実際は色濃く「反映」される。またその手法には一定のルールが課せられる。一つは法的なものでもある。他人の著作物を自分の文章にまぜて使わない。使うときは読者にわかるように表示し、たてわけるといった原則だ。この基本原則をわきまえないノンフィクション作家は実際に存在する。

ともあれ、書き手にとっての生きるための市場は、70年代などの全盛期に比べ非常にパイが小さくなったといわれる。その分野で職業的に生きていくにはかなりの困難を伴うが、まったくやれない世界というわけでもない。その点が個人における格闘であり、苦労のし甲斐のあるところともいえる。個人的には短期スパンで売れるような即物的な作品ではなく、長く価値の残る作品を書いていきたい。いうなれば、普遍的価値をもつ作品ということになる。

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