外国籍住民の一部に地方参政権に限って選挙権を認める政策は世界では珍しくない。地域住民として行政に参画してもらうことで社会との分断を避け、社会的融合を図る意味がある。日本では過去に永住外国人(一般永住者と特別永住者がいる)に限って、かつ、被選挙権を除外し、選挙権のみに限って認める内容の法案が何度か提出され、国会審議されたことがあるが、結論として成立していない。この問題が成立しそうになると、日本会議が与那国島のような小さな島が外国人に乗っ取られるといった荒唐無稽なデマを垂れ流し、有権者の不安を煽ることで阻止してきた。この図式は先の選択的夫婦別姓の問題でも同様で、戸籍がなくなるといった荒唐無稽のデマを繰り返すことで、不安を与えて成立を阻む構図と同一のものだ。冒頭の問題でいえば、地方自治体の選挙における投票権を認めることで、その外国籍住民が地方議員にとって「無視できない存在」となり、住民要望を議員側が意識することにつながる。かつて戦前、日本社会で女性の投票権がなかった時代、男性が独断専行できる社会であったことを思い浮かべればわかるように、権利が生まれるところに、権利者の人権が守られる作用が生じる。個々の外国籍住民の権利が尊重されることで、社会的な合意形成が図られる方向へ向かう。公明党にこの問題をライフワークにしている議員が一人もいないのは残念なことだ。かつての伝統は途絶えている。