草創期の公明党は現場を重んじて、真っ先に前線にかけつけ、綿密な調査を行い、その事実認識のもとに人間主義の政策を組み上げるという美風があった。だがいまはどうか。一つ大きく疑問を感じるのは、やはり埼玉県川口市・蕨市の問題として注目されているクルド人の件だ。もともと30年近く平穏に暮らしてきた外国籍住民はいまでは「ヘイト」の嵐のような被害を受けている。一方で、被害を主張する少数の住民とそれを過度に煽るメディアやジャーナリストが束となって、クルド人ヘイトにつながる言説を垂れ流している。自民党は選挙対策が明白だが、本年5月に小野寺政調会長をトップとする外国人特命政策委員会を設置し、5月28日に川口市で地元市長をまじえ現地ヒアリングを行い、外国人政策と称して「違法外国人ゼロ」などを打ち出した。要するに、治安管理の一方に則した日本人向け(選挙民向け)のパフォーマンスの色彩が強い。その証拠に、クルド人側の聞き取り調査を行ったという話はまったく聞かない。一方、同じ政権与党の公明党はどうか。まだ具体的な行動を起こしていない。このようなときこそ「チーム3000」の威力が発揮されるはずだが、自民党の受け売りを繰り返してるレベルにしか見えない現状は残念なことである。治安対策に異議を唱える人間はいないが、一方で、クルド人の子弟が学校で不当な差別を受けている実態や、外部侵入者の「盗撮」行為に神経をやられているクルド人社会の現状など、当然出てくるべき情報が両党からはまったく出てこない。公明党は、クルド人のヒアリングを行うことが重要だ。一方に偏した事実認識から正しい政策が構築されないことはいうまでもない。なにより、自国で迫害される可能性のある人々(全員とはいわない)がこの日本に行きつき、そこで汗水たらして働きながら日本社会に貢献している「実情」を軽くみるべきでない。双方の納得できる日本社会を構築するために必要なことは、徹底的な現場第一主義であり、その精神をおろそかにしないことに尽きる。