2元論の危うさ

子どものころ、時代劇のテレビを見ていて、父親に問うたことがあった。「どっちが悪もん?」。そのとき父親が困ったような表情をしたことをなぜか今も覚えている。子どもは物事を「よかもん」「悪もん」(いずれも九州地方の方言)の2種類でとらえる。つまり、正義と悪の2種類しかないという短絡的な考え方だ。こうした単純思考は、大人になるにつれ、現実とは異なることを学び、複雑思考を身に付けていく。だが現在の日本はこうした幼児思考が蔓延している社会だ。端的な例は、「反日」や「親中」というレッテル貼りの言葉に明白であろう。中国に対して、「親中」と「反中」の2種類のボキャブラリーしかもたない識者が大手を振るって歩いている。危険なことだ。隣国に対して、「親」も「反」もない。是々非々で、絶対に戦争にならないようにしながら、付き合っていくしかない。その根底に必要なのは、対話のチャンネルだ。あのように独裁的政治体制をとる国では、トップ間や最高幹部級のチャンネルはなおさら重要である。だが上記のような幼児的思考法に陥った者たちに、大人の考え方は通用しない。悪者とは「会うな」「話すな」といった主張につながりやすい。いま必要なことは、心を閉じることではなく、開くことだ。すべてはそこから行動していかなければならない。

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