昨晩、BS番組で日本学術会議に関する討論会が開催された。出演者は4人で、同会議の会長を2011年から17年まで務めた大西隆東京大学名誉教授と、今回の任官拒否された6人のうちの1人、岡田正則早大大学院法学研究科教授、猪口邦子自民党参議院議員という学術関係者の中に、「作家・ジャーナリスト」の肩書で参加した門田隆将(本名・門脇護)がいた。
大西元会長は学術会議の人選が内部においてどのように行われているか、その選考過程について詳しく説明した。法律に基づき、まず学術面における功績・評価が第一であること、その上で男女比バランス(女性の比率がもともと低いため)、地域格差(東京に集中する傾向があったため)などを加味して、民主的な手続きで行われていることを説明した。
一方、門田隆将は、今回の6人排除が正当なものであるとの官邸側の前提に立ち、国民の代表であるはずの首相サイドが人事権を行使するのは当然であるとして、むしろそれができない組織は存在するべきでないなどと主張した。その上で「私は納税者です」と声を張り上げたが、考えてみれば、その番組に出演している人間は全員、納税者だ。自分だけが納税者のように錯覚しているその感性が、同人の主張のすべてを物語っているようなものだった。
今回、被害者となった岡田教授は、理由がまったく示されていないことを指摘し、「闇討ち」という言葉で表現した。一方、門田は、学術会議側が推薦したメンバーをそのまま官邸に認めさせようとする態度は、「学者の驕り」であり、「学術会議の無謬性」などと的外れな非難に終始し、一人だけ浮いているエキセントリックな状況が滑稽であった。
法律では、学術会議のメンバーの選定は学術会議側に委ねられており、政治権力がその中身に立ち入ることはできない。そうした自律的な仕組みが、門田には理解できないようだった。
仮に首相が立憲民主党の枝野代表であったら、門田は同じ主張をするだろうか。絶対にしないと思う。要するに彼の主張は、時の自民党政府を「代弁」しているだけのものであり、このような人物が「民主主義」を声高に叫ぶ姿こそ、本来、本末転倒というべきものであろう。
門田隆将こと門脇護は、週刊新潮記者時代から、多くの捏造記事を連発し、多くの裁判で断罪されてきた。在社時代から思い込みの激しい“特異な人格”を指摘されてきており、その実態は、同人が出演する番組で同人の言動を目にすれば、一目瞭然である。
そこにあるのは「自分だけが正しい」「自分だけが正義の主張をしている」といった究極なまでの『驕り』の心情に基づく言動であり、その姿を自身で客観的にとらえることができない弊害を抱え込んでいる。
猪口邦子議員は学術会議の元メンバーとして、諸外国と比べてその役割が十分でないことを指摘したうえで、10億円ではなく、むしろもっと予算措置を増やすべきと主張していた。日本の国益ということで考えれば、むしろこちらのほうがまっとうな意見であろう。門田のように10億の税金が使われているから国民の代表である首相の人事権が加味されなければならないといった超法規的意見は、この国に政治の「独裁主義」を持ち込むものであって、法律に基づいて運営される法治国家とはいえないものだ。