新党平和(当時の衆院公明党)と民主党が共同で永住外国人地方参政権付与法案を国会提出したのは1998年秋。以来、四半世紀以上がすぎた。この問題は法制審議会の答申以来28年間放置されたままの選択的夫婦別姓問題と似た面を有する。今後も日本社会に外国人が増えていくことは間違いない。それを見越して、定住外国人に限り、地方選挙権(被選挙権は除外)を認めようとする趣旨だった。公明党でこの問題を主導したのは冬柴鉄三幹事長だったが、同氏が政界引退して以降、公明党でこの問題は取り上げられなくなった。外国人のどのカテゴリーで制度を実現するかは技術的な側面を伴うが、冬柴氏は「永住者」という括りでそれを実現しようとした。この制度が実現すれば、先般の東京都知事選挙にも1票を行使できたことになる。私の感覚では、社会的には何の問題も発生しない。むしろ、外国籍住民が日本社会に関心をもち、ささやかながら自らの政治的行動を行使する機会を得ることで、日本社会の質的向上にもつながると確信する。この政策課題に反対するのは選択的夫婦別姓に反対するのとまったく同じ人々だ。外国人に選挙権を認めると、地方自治体が外国人に乗っ取られることになりかねないなどの暴論を展開してきたのは日本会議(神道勢力)などの極右団体、さらにそれに連なる国会議員たちである。日本社会が多様性ある社会に変化して久しいのに、政治がその多様性をくみ取れない仕組みのままでは、この国は閉塞に向かうしかない。