現実離れの疎開案を嗤う

本日付東京新聞(こちら特報部)に台湾有事の際の沖縄離島から九州各県に疎開する計画の準備が進んでいることをまとめた記事が掲載されていた。80年前の往時を思い起こさせる行動に、受け入れ先に想定される九州各県の自治体でも戸惑いが広がっているという。これらの話は断片的に報じられてはきたが、どの島がどの県の受け入れになると具体的にまとめて示したことでより現実性を増すようだ。この記事を見て、私は1933年の東京を中心とした関東一帯で行われた防空大演習を批判して、信濃毎日新聞の主筆であった桐生悠々が書いた「関東防空大演習を嗤う」という社説を思い起こした。桐生は関東に敵が押し寄せる事態はそれ自体すでに日本の完全な敗北の結果そのものであり、そうなる以前に敵を撃退し事態の発生を防止しなければ意味がない旨を書き、時の軍部に睨まれ、弾圧された。戦時やそれが近づく異常事態においては、ふつうの主張が普通としては受け入れられなくなる。桐生は当たり前の常識を主張したにすぎなかったが、すでに時の日本は「異常」な状況に突入していた。現在の沖縄離島の疎開計画も、まったく同様に映る。90年前の日本と現在の日本はとても似ている。

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