デマは6倍のスピードで拡散する

今月新潮社から発刊された『ジャーナリストの条件 時代を超える10の原則』という新刊を読んでいて興味深いことが多々ある。元共同通信記者の澤康臣・早大教授が翻訳した内容だが、よくいわれるフェイクニュースが真実のニュースより拡散力が大きいという話について、マサチューセッツ工科大学の研究者らによる2018年の調査を紹介し、「6倍速く拡散する」という具体的な数字を指摘している。SNSの中でも最も拡散力の強い媒体はX(旧ツイッター)といわれているが、ここで多くのフォロワーを有するインフルエンサーの中には真偽不明のニュースをさも事実であるかのように拡散する「常習犯」が多くみられる。デマを駆使して多くの観客を集めるビジネス方法が、X界隈では定着している。さらにそのフォロワー数を誇示して自分の仕事に生かすという手法がまかり通っている。書籍に次の記述があった。

「私たちに必要なのは、急いで解釈することではなく、何が本当に起きたのかをまずははっきりさせるというジャーナリズムの存在を確固たるものにすることだ」

大事なことは、事実確認があいまいなまま、すぐに結論を出さないということに尽きる。だが自分の「足」で事実確認もしないまま、あいまいな結論めいたものを素早く拡散することでフォロワーを稼ぐのが上記「常習犯」たちの常套手段だ。いうまでもなく、それらはジャーナリズムの手法とは無縁である。デマ拡散の性質を悪用したイカサマ商法がまかり通る現在。

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