安倍政治は国を富ましたか

政治でも会社組織でもすべてに共通することだろうが、成果というものはその時代のトップリーダーの時代にはすぐに出てこない。いうなれば、いまの「現状」は一つ前のリーダーがなした仕事の反映という側面が強い。政治でいえば、7年8カ月におよんだ安倍政権が何を残したかがいま明らかになっている状況だ。本日付日経は1面トップで「円の実力、53年ぶり低水準」の見出しを立てた。さらに厚生労働省が発表した2023年上半期の出生数は37万人で、過去最少を更新するペースと報じられている。何が本当の危機なのか。国策を誤ったツケは今後も広がる一方に見える。

かつて世界を席巻した日本企業の力はいまや見る影もない。新型コロナ禍で自国でワクチン製造・開発すらできなかったこの国の技術力の低下ぶりは記憶に新しいが、かつて世界に誇った半導体においても「いまや最先端品をつくれる企業はない」(8月30日付日経)のが実情だ。日本の基幹産業ともいえる自動車産業も、実際はいまがピークで、今後は電気自動車の出遅れが響いて、下がる一方と見られている。この分野でも中国のほうが先を行っている。

このコラムでも繰り返しているが、「脱原発+再生エネへの注力」を怠った安倍政権のツケにより、再生エネルギー分野も完全に中国に水を明けられた。当然、その分野での産業育成は大きく出遅れている。日本の産業衰退を招いた根幹に、政治理念の「狂い」があったことはもはや明らかだろう。いまの岸田政権は、産業立国の失敗を、防衛産業の拡充というこれまた「安易な手法」で埋め合わせしようとしている。殺傷兵器の輸出容認という国策転換はそのわかりやすい実例だ。この方向に、平和立国をめざしてきた公明もが乗ろうとしているのがいまの現状で、これでは信頼できるよすががない。加えて食料自給率も依然低いままの状態で、安倍政治にとって本当の安全保障とは何なのかという理念欠如の、これまたわかりやすい実例だ。

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