一つの試金石

今国会で焦点の一つとなったLGBT理解増進法案が昨日参院本会議で可決され、成立した。報道によると、来週半ばに公布され、即日施行される見通しという。この法案、G7広島サミットの開催とともに再浮上し、現在に至ったものだが、安倍派がひしめく自民党という「第1の関門」と、維新・国民の「第2の関門」をへた上で成立にこぎつけた経緯があり、超党派で合意に至った内容とは異なる部分が生じた。そのため当事者からは「逆に差別が強まる」といった批判意見が根強い。ともあれ、国会提出だけで審議もされず、廃案となる可能性もあっただけに、成立そのものは前向きに考えたい。

 そもそもこの法案の立法趣旨は「理解増進」であり、差別禁止といった強制力を伴うものではない。それでもこれだけの異論と反論を受けた法案だっただけに、「難産」の子どもとなった。問題はこれからどう生かしていくかという運用の側面だろう。法案そのものに反対してきた日本会議は、成立直前、次のような文章を配信している。

 「法案は残念ながら法律として成立する公算が大きいのですが、私たちの戦いはこれで終わったわけではありません。男性器を持ったジェンダー女性(身体男性)が女性スペースに入って来ることを女性は恐れ心配しています。学校で過激なジェンダー教育が行われ、左翼活動家が学校を含む公的機関に介入してくる恐れは消えません。ですから、私たち一人一人が、法案成立後に作成される予定の『基本計画』に注目し、こうした懸念を払拭できる『防波堤』になるよう注文をつけていかなければなりません」

 限界右翼と呼ばれる極右勢力は、この法案が天皇制崩壊につながるとの極論めいた危機感を抱いていた。同性婚や選択的夫婦別姓、女系天皇の容認につながると恐れ、その第一歩を是が非でも阻止しなければならないとの「誤った使命感」のもとに動いていた。世界に通用しない普遍性を持たない特殊思想は、こんごはこの国で縮小を余儀なくされる時代に入るだろう。

トラックバック・ピンバックはありません

ご自分のサイトからトラックバックを送ることができます。

現在コメントは受け付けていません。