軍人が政治に口出しする時代

昨日付の産経新聞で前統合幕僚長という人物が憲法改正について自衛隊の憲法明記に関する主張を行っていた。統合幕僚長はいうまでもなく、陸海空を束ねる自衛隊のトップの職責を意味する。従来であれば、軍人に相当する「制服組」がこのようなあからさまな政治的発言を行うことは少なかった。先の大戦の反省から文民統制(シビリアンコントロール)が意識されるようになったからだが、その傾向は近年大きく崩れている。一つは90年代のPKО以来の自衛隊の活躍であり、近年は国内での災害救助での貢献がある。さらに法制度上も庁から省への格上げ移行、安保法制整備等による日本での市民権獲得意識が横たわる。冒頭の記事の中で前統幕長は「国防を担う組織に違憲論がある国家は正常ではない」とぶつ。いうまでもなく、この論争の背景には先の大戦とその後の経緯がある。それらを「なし崩し」にしてきた歴史もある。要するに法治国家の崩壊だ。冒頭の主張によれば、それはかつての大日本帝国時代への逆戻りにしか見えない。あの戦争で、旧日本軍が現在のロシア軍と同様、大陸に侵攻し、アジア諸国に多くの迷惑をかけた事実は揺るがない。さらに沖縄の国民を守らず、満州でも自国民を守らず、多くの人びとが命を落とした。軍隊は自国民を守らない。これは鉄則的な教訓である。軍隊が守るのは、国家のメンツでしかないからだ。その上で日本の歴史的経緯を無視することはできない。軍人が政治に嘴をはさんだ時代に、ろくな結果は生まれなかった。いまもまたその轍を繰り返しつつあるようにみえる。

【施行から75年 憲法改正を問う】河野克俊元統合幕僚長 自衛隊違憲論も合憲論も破綻 – 産経ニュース (sankei.com)

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