非現実的な築地再整備案を最大争点に掲げた共産党の誤り

1997年の都議選で日本共産党の候補に密着して取材を行ったことがある。当時は日本社会党が党名変更し党勢を失っており、その代替票として共産党が漁夫の利を得る政治構図にあった。今回の都議選も、民進党が似たような状況にあり、再び同じうま味を得たいと考えているようだ。だが、当時とは明らかに異なることもある。共産党執行部の判断力の低下だ。

97年の選挙では、シルバーパスがなくなるなどの危機感を煽って、集票することに成功したが、今回、同党が最大の争点として掲げる政策は、市場移転問題だという。しかも同党はただ一党で、築地市場の再整備を訴えている。今日付の読売新聞で共産党東京都委員長の若林義春がそう述べているのを読んで、この党もずいぶんお粗末な党になってしまったとの感慨を抱いた。豊洲市場への移転は自民、公明、民主が推進したが、地下土壌が汚染されているとはいっても、魚を地下水で洗うわけでもない。共産党は地震が来れば、ひび割れし、「建物内に気化した汚染物質が入っててくる」(若林氏)などといつものように不安を煽るが、その築地再整備案も、その根拠の薄弱さが多く指摘されている。

まず築地再整備の素案では、土壌汚染対策がほとんど考慮されていない。つまり欠陥素案にほかならない。さらに築地に戻すとなれば、築地市場を解体してその跡地に造る予定だった幹線道路など多くの都市計画の変更が必要になる。その手続きだけで5年程度かかるとみられている。

また築地の再整備を7年の工期と見積もっている点も、建築の専門家は、「7年では絶対に無理、10年以上はかかる」と諫めている。

また肝心の6000億円かけて出来上がった豊洲市場を壊して売却するとしているが、豊洲に大規模マンションの需要は乏しいとの鋭い指摘も出されている。

おしなべて、築地再整備(=改修)案は、「非現実的」との意見が続出しているのだ。

最初からこうした意見が出ることがわかっていて、わざわざ築地再整備を東京都議選の最大争点に掲げた日本共産党の意図は何か。私は単に、この党が頭のてっぺんから劣化している証拠と受け止めている。現実的な政策実現というものをしてきたことのない政党に、そうした思考回路が乏しいからだと考えている。

 

トラックバック・ピンバックはありません

ご自分のサイトからトラックバックを送ることができます。

現在コメントは受け付けていません。