虚偽は相手になすりつけるのが勝ちと捉える「産経戦略」

産経新聞出版が2016年に発刊した『国会議員に読ませたい敗戦秘話』という本がある。前書き部分では、「歴史の節目といえる事案が起きる度に、『日本を貶めよう』と考える勢力と、これと結託した一部メディアが恣意的なプロパガンダ報道を繰り広げ、多くの国会議員が付和雷同もしくは右往左往することにより、結果的に歴史は大きく歪められてしまっていた」と綴られている。

一方で、この本の中では、沖縄は捨て石ではなかったとも描かれている。その理由として、特攻隊が沖縄戦で多く投入されたことを挙げているが、それが捨て石でなかったことの証明になるわけがないことは、まともな思考能力があれば明らかだ。

沖縄が米軍上陸と正面から戦わず、持久戦を用い、首里が陥落したあとも、さらにもう一カ月、時間稼ぎして5万人近い県民を無駄死にさせた事実を、いまも沖縄の人びとは忘れてはいない。すべて本土決戦を避けるために1時間でも長引かせる司令のもとにとられた戦術にすぎなかった。

先の産経本は、こうした歴史の事実をないがしろにし、都合のよい別の物語を構築している。こうした戦法を最近同じ出版社から出た本の記述を借りれば「韓国のデマ戦法」というそうだ。私はこういう新聞社が日本に存在することを、彼らと違って、排除するつもりはない。だが言論の根本目的を見失っているメディアとして、認識する必要はあるだろう。靖国という「官製神話」を普及啓蒙することを商売道具として成り立つ新聞社。こんな新聞社のどこに国際的な未来性があるのだろうか。

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