このコラムで私が記者やフリージャーナリストとして外国人問題を熱心に取材した過去があることは何度か書いたとおりだ。しばらくそのテーマから離れていたのは別の事情による。それが今回、再び取材を始めるきっかけとなったのはある公明党議員の発言に大きな疑問を抱いたからだった。取材を開始して、久しぶりの面々に再会して懐かしい思いもした。30年ぶりに顔を合わせた女性もいる。今回の参院選挙で日本有数のコピーライターを抱えるとされる参政党は「日本人ファースト」のキャッチで知名度を上げ、批判されればされるほどさらに注目されるという奇妙な軌跡を描いた。腕利きのコピーライターからすれば、それらの過程も織り込み済みだったかもしれない。一方、政府与党は「不法滞在者ゼロプラン」を発表し、日本で長年定着している“外国人狩り”を行うことで自己ピーアールを始めた。この計画の裏目的は、埼玉県で問題とされたクルド人たちを日本社会から抹消するための実戦計画ともいえた。だがこの問題でそもそも公明党はその前提となる調査を行っていない。そのため上記プランは、真実に基づかないまま、机の上だけで計画され、実行された。わたしは公明党の国会議員なり党幹部が、地元の市議団に対し、「(産経のような偏った)報道だけでは真相がわからないので、当事者を含めた十分な実態調査を行い、見解をまとめてくれ」と指示を出していれば、結果は全く異なったと考える。調査なくして政策なし、現場なくして政治なし、の美風は生かされなかった。当事者の声を聞かず、入管庁の年来方針のままに、選挙目的のために「不法滞在者ゼロプラン」を始めてしまった。朝5時から夜8時まで解体業などの肉体労働で日本社会を支えているクルド人男性や、地元の小学校、中学校、高校に通い、日本社会で未来の夢を見ていた高校生、大学生まで強制送還されている。政治家は、これらの高校生、大学生が自分の家族であったと仮定して考え、同じことをされたらどう思うかを胸に手を当てて考れてほしい。一人の声を聞く、一人の声を大事にするは同党の選挙コピーだったと思うが、この問題に関しては該当しない。外国人を同じ「人間」と見ていない証左だろう。やるべきことをやらないで、民衆から支持されようなどと考えることは不遜の極みだ。