沖縄戦の教訓

2017年秋から 沖縄空手の取材を行ってきた関係で、沖縄本島南部の平和祈念公園は何度も訪れた。「平和の礎(いしじ)」で知られる戦没者の全氏名が彫られたモニュメントで有名な公園である。沖縄戦で多くの現地の空手家も命を落としたので、その名前を探す目的でも何度か訪れた。隣接する平和祈念資料館を複数回見学したほか、さほど離れていない場所にある「ひめゆり平和祈念資料館」を訪れたのは2~3年前のことである。戦後80年に合わせてNHKが製作した「沖縄戦80年 戦場で人々は」は戦争における軍隊の本質がこれでもかとばかりに浮き彫りにされた秀作だった。軍隊は国土は守ろうとするが、生身の人間である国民(住民)を守らない。逆に敵と味方が入り混じる状況になったとき、味方であるはずの住民をスパイと疑い、平気で殺害したのが旧日本軍だ。そのような光景が久米島を例に描かれていた。ひとたび同じ環境設定が繰り返されれば、自衛隊が再び同じ行動を繰り返すであろうことも容易に想像できる。だからこそ、戦争そのものを回避しなければならないということはしばしば指摘されることだ。必要なことは、過去の教訓から何を学ぶかであり、かつて沖縄に馳せ参じた若者を宣揚して現代日本人に勇気を与えるような、門田隆将のような作業ではない。

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