安倍政治の「隠れた」最大の罪

安倍政治は21世紀初頭の日本政治において正負双方の遺産を残した。正の遺産は幾つかあるだろうが、隠れた最大の負の遺産は原発政策にあったと確信する。原発事故対応でお粗末さを露呈した民主党政権の後を受け、まだ世論が反原発志向を保っていた段階で、原発に頼らない国家構築をなしえた最初で最後の「最大のチャンス」を安倍元首相は自ら放棄したからだ。日本国力の総意をあげてこの問題に取り組み、「このようにできるぞ!」と世界に範を示していれば、多くの国が追随したことは間違いない。本日付読売は隣国の中国ですでに58基の原子炉が稼働し、さらにこれから計102基が稼働する予定であることを伝えている。多くは沿岸部に位置し、仮に原発事故が起きれば、日本は「風下」にあるため、影響を受ける可能性が高い。これは明らかに安倍政治の負の遺産がもたらした影響ととらえる。一方で本日付産経は洋上風力がコスト増で立ち行かなくなっている現状をレポートしている。大規模入札で先陣を切った三菱商事が事業撤退を考えているという事態というから、これは日本の洋上風力の壊滅方向を指し示す。背景として洋上風力設備の多くを海外調達に頼っているため「為替変動に左右されやすい」との理由を示す。これなども上記の原発不要の国家づくりを推進する中で国産部品を奨励し、国内産業の育成を併せて進めていれば回避できた問題である。政治の遺産は後世において歴史的に断罪される。この問題は「不作為の罪」としての典型事例と感じる。

トラックバック・ピンバックはありません

ご自分のサイトからトラックバックを送ることができます。

現在コメントは受け付けていません。