南京事件に見る櫻井よしこ、百田尚樹、有本香らのレベル

一昨日の毎日新聞のデジタル版に、ベストセラーとなった『日本国紀』の中で、南京大虐殺を否定するお決まりの使い古しのデマについて、その内容を詳細に分析する記事が出ていた。この問題はすでに歴史学会では決着のついた問題だ。なぜなら当時、南京で実際に戦闘した日本軍部隊の公式記録である「戦闘詳報」(上記の毎日記事では南京戦に参加した全部隊のうち、戦闘詳報が明らかになっているのは3分の1にすぎないと指摘している)で、虐殺に触れた部分が多くあることに加え、直接当事者である兵士らの陣中日記にも多くの証言が残る。そうした直接証言をもとに、数万の不法殺戮が認められているからだ。だがこの戦闘に実際に参加したこともなく、直接見たこともない存在にすぎない日本の文化人らがこの事実を否定するさまは滑稽極まりない。具体的に名前をあげればたくさんいるが、「ぬれぎぬ」と主張する櫻井よしこ、上記の『日本国紀』を執筆した小説家の百田尚樹、同書の編集にかかわった有本香などの面々が挙げられる。要するに「ジャーナリスト」などと名乗っていながら、実際はファクトを認めることができず、「日本は悪くない」と駄々っ子のように事実をねじまげて活字にしている恥ずべき面々のことだ。

もっともこうした歴史観がどこから出ているかといえば、その象徴は、靖国神社にある。昭和のあの戦争が間違った戦争であっては困る勢力にほかならない。無駄死にであっては、神社の存立にかかわる。そのため事実をねじまげて、「南京虐殺はウソ」と主張してきたのがこの勢力だ。そうした政治的な意図的デマを日本社会に大きく広げる功績をつくったのが文藝春秋で「アウシュビッツにガス室はなかった」というこれまた荒唐無稽なデマで同社を追われた編集人・花田紀凱の存在である。彼らに共通するのは、言論人の最優先すべきものが事実(ファクト)とは限らないという、彼らの特異な信条だ。こうした靖国神社発の政治的デマが、いまでは月刊Hanada、月刊WiLL、産経新聞などで毎月のように日本社会に発信され続ける。しかもそれは安倍元首相らの政治権力と癒着しながら行われてきた。政治権力を利用して拡大されてきたデマだけに、日本社会にすでに広範囲に浸透している。意図的なデマで汚染された社会――。これが現代日本社会の大きな特徴であり、課題だ。

「日本国紀」読者こそ読んでほしい 「南京大虐殺はウソ」論を検証 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

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