鎌倉時代の既存仏教(浄土、禅、真言など)を徹底的に批判し、幕府に疎んじられ斬首の刑(執行できず)を受けそうになったものの佐渡島(新潟県)に流罪追放された日蓮は、その後鎌倉幕府が内部分裂して合戦騒ぎとなりかねない事態を見越していた。正法を保ち、それを広めようとする自身を弾圧した報いと捉えていた。いま日本の政治勢力において左右の政治グループが分裂騒動に陥っている状況を上記の歴史的史実と重ね合わせた心情で見ているのは、ごくごく少数の創価学会員くらいだろう。日本共産党は、長年公明党の“ライバル企業”ではあったが、ここに来て党最高幹部の判断ミスが相次ぎ、まったく党勢を失っている。一方、右派側といえば、月刊『Hanada』が育て、増長させた「日本保守党」という政党が、右派界で大きな亀裂を生み出し、大分裂の様相だ。安倍元首相が亡くなった後の必然的な帰結ともいえるが、あっけなく自壊していくその様子は、往時を知る者からすれば思いがけないほどの意外な状況である。中道勢力の確かさがいよいよ問われる時代となることは間違いない。