文学は何に奉仕するのか

過去に「プロレタリア文学」という言葉がもてはやされた時代があった。平たくいえば、社会主義や共産主義を鼓舞するための文学作品ということになろうか。『蟹工船』などの作品がよく知られる。一方で戦中は、作家がお国のために従軍し、国威宣揚の作品を粗製乱造した歴史がある。文学が戦争遂行に利用された歴史だ。この両極端はいまも存在し、特に後者の国家主義の広まりは近年めざましい。ノンフィクションも文学の一つの範疇であろうが、日本人は素晴らしい、戦争は正しかったと啓蒙するための作品も増えているように感じる。そんな中で何が肝心かというと、その啓蒙しようとしている思想に普遍性があるかどうかが非常に重要な点だと感じるのだ。20世紀の数々の実験により、社会主義・共産主義に正当性がないことはすでにはっきりした。また国家主義はそれにも劣らず、日本を1945年の敗戦に導いた張本人だ。加えて日本人のみを宣揚する偏狭な教義が、日本人全体はおろか、世界で通用するはずもない。要するにその思想に普遍的な広がりがなければ、うまくはいかないということだ。その意味で世界的に普遍性をもつ法華経を基盤とする文学は、これからの時代だ。

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