歴史に淘汰される松本清張

松本清張といえば、一定の年代であればだれもがその名を知る有名な作家だ。ひところは日本共産党の「隠れ党員」という噂も出たことがあったくらいで、当時の日本共産党寄りの作品を多く発表してきたことでも知られる。なかでも「日本の黒い霧」シリーズはその最たるもので、日本共産党が組織的に起こした謀略殺人をまるでえん罪であるかのように描いたり、さらに朝鮮戦争について、韓国軍から先に仕掛けた謀略戦争であるかのように書いていた。また伊藤律のことを日本共産党の主張そのままに「稀代のスパイ」のように難じてみせた。だがそれから半世紀もすると、事の詳細は明白になった。白鳥事件は日本共産党が自ら起こした殺人事件であることが確定し、朝鮮戦争はむしろ北朝鮮側が仕掛けた社会主義陣営による侵略戦争であった事実が確定した。さらに伊藤律のスパイ説は、当時の最高幹部であった野坂参三や宮本顕治らが自分の立場を守るために振りまいたデマであったことも浮き彫りになっている。要するに、松本清張の作品内容は「虚偽」にまみれていた。ファクト(事実)に基づかない作品が普遍性をもたないのはもちろんのこと、作品の価値を維持することもできない。松本清張といえば、創価学会と日本共産党が過去に協定を結んだ際の仲介人としても知られるが、マルクス=レーニン主義という色眼鏡で社会を見たツケは、後世になってこのように返ってくるというよき反面教師といえよう。

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