犯罪心理学の専門家ロバート・ヘア博士が犯罪者調査の類型から良心の呵責をもたない一群を分析し、抽出できるようにした概念が「サイコパス」だ。驚くほど無神経で嘘つきという共通の特徴をもち、良心の呵責を持たないため本能のままに行動し、多くの犯罪行為に手を染める。このコラムでも何度も指摘してきたように、ドナルド・トランプ現大統領はヘア博士の発明したサイコパス・チェックリストで診断してもすべてに当てはまると見られるこれ以上はないというレベルの“完全なサイコパス”だ。サイコパスの行動の特徴には、常人なら躊躇するような大胆な行動でも平気で行えるという趣旨のものもある。「トランプ関税」はまさにそうした動きだろう。彼にとってはその結果が間違ったものになるかもしれないという常人なら当然抱くであろう「恐れ」が感じられない。それでも第1次トランプ政権では周りにブレーキをかける側近がいて、ある程度の軌道修正がなされたことはよく知られる。だが第2次政権ではそうした障害物を自ら事前に取り除き、イエスマンばかりで固めているというから、“ブレーキの効かない暴走列車”に今後も世界は振り回されることになるのだろう。その結果、一定の破滅が比較的早く訪れる可能性がある。日本政府がなすべきことは、自分の国だけがうまく立ち回ろうといった近視眼的な行動だけでなく、より大きな視野で、地球全体の利益を前提に行動することだろう。日本の民主党政権ができる前の一時的な熱狂と似て、アメリカ国民も「あれは失敗だった」との同じ思いをすることはすでに明らかだ。民主主義の最大の欠陥ともいえる部分だが、この問題を解決するには有権者がリテラシーを向上させるしか方法がない。