戦後80年首相談話を出すか出さないか。その種の記事を各紙で見るようになった。主には保守派からの70年安倍談話で十分という主張が多いが、本日付産経サンデー正論の「政府・与党内に慎重論」も同様だ。ただそこで書かれている認識については全く首肯できない面がある。識者の「なぜ日本は歴史問題を利用され続けるのか」「なぜ日本だけが謝り続けなければならないのか」という設問に対する回答として、「戦後、アメリカから東京裁判史観を植え付けられ、日本人がいまだに、その毒から抜けきらないから」の引用を使っている。だが真相の主因は逆だろう。日本の一部勢力が南京事件や慰安婦問題について事実に基づいた探究の姿勢を持たず責任回避の言論を発信することで、被害国の意識を逆なでし続けていることが主たる要因と当方は断じる。その主犯の一つが産経新聞にほかならない。仮に、日本の原爆被害について、アメリカが「原爆は落としていない」「無差別爆撃などしていない」などと言ったら、日本も反論せざるをえなくなるのと同じことだ。逆の立場で考えれば原因は自ずと明らかになる。「80周年談話」の意義は、公明党代表が指摘するように被爆の観点を盛りこんだ未来志向の内容にすることと同時に、さらには日本の低劣な右派論壇誌などと「逆」に、加害の事実をファクトに則して改めてきちんと認める姿勢を留めることにあると考える。