30年ぶりの少数与党が置かれた立場は厳しい。重要法案が通らないと即、政権崩壊に結びつくため、野党の要望を建設的な内容の範囲内で取り入れることは「必然」となる。実は似たような図式が日本共産党内部にも見受けられる。党改革を進言し、党首を他党のようにきちんと選挙で選ぶことを書籍で訴えた党員との関係とよく似ているからだ。この場合、冒頭の少数与党のように、要求を拒めば即自らの存立基盤が崩壊する状況であれば、日本共産党幹部も一定の譲歩に出ざるをえないのだろう。だが、多少の“延命”がまだ可能な状況下にあって、彼らは自己改革することを「拒否」している。まだ多少の余裕があるということだろう。この2つのよく似た状況を比較した場合、どちらがよい結果に結びつくかは結果オーライだが、少なくとも前者は相手の意見を聞き、一部を受け入れるという包摂的姿勢をはっきりさせている。一方、共産党のほうは相手の意見を拒絶するだけでなく、そのような意見を述べること自体をケシカランものとして相手を除名したり、除籍したりする排除行為を繰り返している。この2つは似ているようでまったく異質の対応をとっているわかりやすい実例といえる。どちらが民主主義に則しているかと問われれば、だれもが等しく前者と答えるだろう。要するに少数与党と日本共産党の違いは、民主主義と「反」民主主義(あるいは非民主主義)の違いといえる。