このコラムでしばしば言及することだが、人間には感謝や思いやりといったプラスの側面を持つと同時に、時に他者を憎悪し毛嫌いしてやまない負の側面を併せ持つ生き物だ。前者を「人間的行動」、後者を「野獣的行動」と定義すれば、現在の世界では後者の側面が席巻している状況だ。憎悪は人間の感情としては最も強いもので、一度、この状態に入るとなかなか抜け出せない。当事者同士の話し合いなどでは解決はとうてい困難な状況となり、第三者の仲介や、さらには時間を置いた融和プロセスが必然的に不可欠となる。このほど北朝鮮から兵士がウクライナ入りし、ロシアの援軍となる事態が憂慮されている。戦争がアジアに飛び火しかねない状況をうむからだ。いずれも憎悪が憎悪を拡大する「野獣的行動」の延長に映り、ウクライナ戦争から始まった一連の事態はエスカレートする一方に見える。ここで必要なことは「人間的行動」を広げ、世界全体の基調をそうした方向に持っていくための努力だ。ホモ・サピエンスという名の人類が“賢いサル”なのか“愚かなサル”なのかを問われるリトマス試験紙でもある。