山口時代が残した公明党の課題

公明党の山口代表が代表退任を公式に発表した。代表としての15年間の歩みは民主党政権、安倍第2次政権、菅、岸田内閣までの期間だった。特に政治路線の異なる安倍政権のもとで、妥協と着地点を探す困難な政治運営を余儀なくされたと推察する。支持者の多くは山口代表の功労を賞賛する声が多いが、個人的に考える同党に残された課題を5点にまとめここに書きとどめることにする。

1つは安倍政権のもとで、首相自ら進めた歴史改ざん行為に公明党は終始、異論を唱えなかったことだ。慰安婦問題、南京事件を筆頭に、歴史学会(アカデミズム)の検証を無視し、政治が歴史を歪曲してきたことは負の歴史として刻印される。過去の不都合な歴史が時の政権によって意図的に変えられれば、それは政治の土台が壊されたに等しい。異論を述べないのは連立政権を壊さないためとの配慮だったのかもしれないが、正確な歴史認識は人道の土台であり基礎という認識が欠けている。結果的にヘイトスピーチの蔓延を許したと感じる。

2点目。教育を重んじ、軍事を肥大化させないという党創設者の方向性ははっきりしていたが、現実政治は防衛予算を倍増させ、教育予算は増えないという逆の方向に至らしめた。しかもそれは必要不可欠な武器を購入する積み上げ方式ではなく、腰だめの数字を掲げることで成し遂げる乱暴なものだった。その結果、自衛隊には金銭腐敗が広がった。軍事予算をむしろ教育予算にまわし、不足する教職員の定数を増やすなど、過重な労働を強いられる教職員の人件費に充てるべきだった。教員志望者が激減しているこの国に、力強い未来は描けない。

3点目。公明党は女性国会議員を増やさず、育成にも手が回っていない。力ある女性国会議員が多く育成され、いつでも次の党代表は複数の女性議員から選べるくらいの党運営をめざすべきだ。公明党の女性国会議員の割合は自民党と変わらないくらいの低次元にとどまる。

4点目。平和を述べても人権を言わない党の態度には詭弁が伴う。平和な社会は、裏返せば人権を保障された社会にほかならない。公明党が「平和の党」を述べても、「人権の党」を主張できないのは、アプローチとしてはなはだ弱い。

5点目。公明党は情報公開に対する意識が弱い。安倍政権で財務省の文書改竄が出たとき、同党はスジを通さなかった。情報公開は“民主主義の根幹”であるとの認識強化が不可欠だ。

次の代表がだれであれ、小生は上記の5つの観点から同党の今後の進捗度を見ていきたい。

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