女性9人と付き合った話ではない。自民党総裁選のおそらく最後となる9人目の候補者に滑り込んだ女性議員・上川陽子外相のことだ。自民党の歴史の中でも異例の多人数候補が争う総裁選の出馬会見で、外相は「しんがりの覚悟」について語った。冒頭の20分間、自身の思いと政策骨子をよどみなく述べた上で、残りの40分間を記者との質疑に当てた。記者に配られた1枚紙は政策の骨子が総花的に盛られている感じで、一読しても独自性を感じるところは少なかったが、自身の語りでは、随所にその個性が現れた。何より「真の危機はこれから始まる」として、経済が急激な縮小に向かう2040年に向けて「退却戦」を行う覚悟を語った。おそらくこのような視点をこのような言葉で語る候補者は9人の中では唯一である。また「何かになりたいと思って政治判断をしたことはない」といった政治信条や、「声なき声が一番大事」「だれ一人取り残さない社会」といったキーワードは、目の前で聞いていて本人の心底からの政治姿勢であることが実感できた。地味だが、かなり安定している。ルールを破ってふわふわと一人よがりの行動に走る他の候補とは明らかに異なる。中道寄りの政策面や慎重に判断し果断に行動する姿など、連立相手である公明党とも親和性の高い候補者と感じた。