上川外相発言事件が波紋を呼んでいる。もともとの報道は共同通信が発信したものだが、明らかに外相の真意とは別の形で言葉尻を取り出し、問題化しようと努めた形跡が明らかだ。冷静な人は報道を見て、語った本人の真意がどこにあるのかある程度わかるまで正確な判断はできないと思っただろうが、第1報のみを鵜呑みにし、自民党叩きに狂奔した面々が目についた。個人的には主に立憲民主党の女性議員らが印象に残った。同じ女性議員だから、女性問題に熱心な上川陽子大臣の真意を確かめて慎重に行動するならともかく、事実を確定させる前に相手を叩くという行動に出たその卑しい姿が、やはり立憲に期待するのは無理だなという印象を改めて抱かせる結果になった。共同通信が行った行為はジャーナリズムの目的を明らかに踏み外していたが、その踏み外した行為が、“同類の者”たちを浮かび上がらせる「リトマス試験紙」の役割を果たしたことになる。上川大臣が選挙で連敗がつづく自民党議員の一人として、地元静岡の知事選応援で、女性の支援者を対象に熱弁を振るう中で飛び出した言葉だ。当然、次の宰相候補の一人と目されているので、マスコミの関心度が上がるのは無理はない。だがジャーナリズムは、自らの政治的動機によって、事実を改変したり、過度に誇張していいわけではない。その意味で、共同通信の当該記事は特に英文の発信はひどいものだった。上川氏を追い落とすことが自民党政治を終わらせることと勝手に妄想したとしか思えない面がある。ジャーナリズムの最大要件は「真実」に拠って立つことであり、それ以上でもそれ以下でもない。共同通信の意図的な誤報を発したデスク、編集責任者は行動の責任を問われる。まじめに真実追求報道をしている多くの共同社員全員の名誉を傷つけた行為でもある。懲戒処分は免れない。