綱領に刻まれた真実の歴史

私が4年前の2020年4月に上梓した『ガラパゴス政党 日本共産党の100年』の巻末には、資料集として必要最低限の日本共産党の綱領を収録している。本当は全文(綱領のすべての文章)を収録したかったのだが、ページ数の関係で一部は削除しながらの作業となった。それでも同党の最初の綱領であるいわゆる「51年綱領」の肝の部分、さらに同党の戦後の大まかな方針となってきた「61年綱領」の主要部分、さらに改正された「2004年綱領」のすべての改定部分、最後に2020年改正の改正部分はきちんと収録してある。

いまさらながら「61年綱領」に目をとおすと、当時の宮本顕治書記長が示した未来社会論はその後、ほぼ正反対の歴史をたどってきたという厳然たる歴史が刻印されている。たとえば「61年綱領」では、「世界史の発展方向として帝国主義の滅亡と社会主義の勝利は不可避である」と高らかに宣言していたが、現実は社会主義の柱である旧ソ連が91年に消滅(滅亡)し、帝国主義の象徴であったアメリカは滅亡どころか、いまも健在である。当時の日本共産党のめざした方向性はことごとく外れ、理にかなったものでなかったことが現実の歴史に示されてきた。当時の日本共産党はソ連、中国、北朝鮮、ベトナム、キューバを「地上の楽園」であるかのように美化して赤旗紙面で紹介してきた。だがいまでは「私たちのめざす社会とは無縁です」(2021年1月25日付しんぶん赤旗)など、手のひらを返した形で平然と述べる。主張の根幹が間違っていた政党が、仮に政権与党に入れば、政治を誤らせるのは理の必然だろう。ウソとゴマカシ。同党の歴史を俯瞰して見えてくる言葉は、この2字4字に尽きる。

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