性犯罪もみ消し疑惑に相当性認める判決

昨日東京地裁で重要な判決が出されたが、判決文が膨大(264ページ)なため司法記者たちが敬遠したのか、本日付朝刊の在京6紙(毎日・東京・朝日・産経・読売・日経)に該当記事は見当たらなかった。原告の山口敬之(のりゆき)氏が2015年4月3日から4日にかけて泥酔状態の伊藤詩織さんをホテルに連れ込み、同意なく性行為を行ったとして民事裁判で認定されている問題で、山口氏が一連の経過を記事でキャンペーン化した「週刊新潮」の母体である新潮社や取材編集関係者に対し9265万円の損害賠償などを求めた裁判で12月26日、東京地裁の民事25部(片野正樹裁判長)で一審判決が言い渡され、新潮社側に165万円の賠償を命じた。対象となったのは2017年5月から20年4月までに「週刊新潮」に掲載された記事23本とデイリー新潮(ウエブ記事)56本。裁判所は争点整理として以下の4点にまとめた。(1)原告が準強姦に及んだ事実(2)原告が準強姦の被疑者として逮捕状発布を受け、逮捕寸前であった事実(3)原告がペギー社の代表から顧問料などを受け取っている事実(4)原告が「週刊文春」に掲載したベトナム戦争に関連する記事がねつ造されたとする事実――。これらの点に関し、一審判決は公共性・公益性を認めた上で以下のように認定した。

(1)

〇準強姦行為 真実性あり

●デートレイプドラッグ 真実性なし 相当性なし

〇タクシーから引きずり出しホテルに連れ込んだこと 真実性あり

●ノートパソコンで性行為を撮影 真実性なし 相当性なし

〇避妊具なく性行為に及んだ 真実性あり

〇トイレから出た女性をベッドに押さえつける暴行があった 真実性あり

〇性行為において女性の乳首と膣内に出血等を伴う傷害を負わせた 真実性あり

〇「君のことが好きになった。早くワシントンに連れていきたい。シャワーを浴びたら一緒に薬局でピルを買いましょう」と発言した 真実性あり

(2)

〇準強姦容疑で捜査が行われたこと 真実性あり

△準強姦容疑の逮捕状発布 「的確な証拠がない」 真実性なし 相当性あり

(3)〇△真実性もしくは相当性あり

(4)△相当性あり

総じて、「週刊新潮」が報じた一連のキャンペーンの主要部分はいずれも名誉毀損とは認められず、実質的にはごく一部の記述(デートレイプドラッグの使用、性行為の盗撮行為)が認定されたにとどまる。

重要なことは、山口氏が安倍首相に近い立場で、自らの犯罪行為についてもみ消したと指摘された疑惑そのものについて、一審判決では相当性を認め、免責した事実だ。「週刊新潮」記者は警視庁刑事部長だった中村氏に直接取材を当てているが、そのやりとりにおいて、中村氏は逮捕状発布の事実について肯定も否定もしておらず、その内容から、判決は真実相当性を認めたもの。結論するに、山口氏は自ら支局長を務めていたTBSワシントン支局でアルバイトをさせてほしいと願い出た若い女性と2人きりで酒をのみ、泥酔した状態の彼女を自ら宿泊するホテルに連れ込み、同意を得ずに性行為を行ったことが複数の民事裁判で認定される結果となった。加えて、これらの行為を女性から問題にされた後に警察側に手を伸ばしもみ消したとされる疑惑について、今回の判決では「虚偽」と認定されることはなかった。

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