将来的に難民審査を入管庁から切り離すべき

出入国管理及び難民認定法(いわゆる入管法)の改正問題が大詰めにきている。この問題、2年前にはスリランカ女性の収容所死亡問題で世論の高まりをおそれた与党側が採決せずに廃案となった経緯があるが、今回同内容の法案を出したことで問題を複雑化させている。審議の過程で難民審査における杜撰な実態が明るみになり、反対の声が強くなっているからだ。

今回の改正の柱となる一つは、難民申請を3回以上している人は強制退去できるようにするという変更だ。これまで回数制限がなく、難民申請をすれば強制送還されないので悪用されるケースが目立つとする。事実そのようなケースはあるのだろう。だが問題の本質はそこではないように思われる。なぜならそうした行動を防止するために一律に法律で定めて排除する方法は、善意の申請者までも網にかける危険性をはらむからだ。実際、3回以上申請して難民として認められたケースも現実に存在する。さらに難民は最も弱い立場の人間といってもよい。日本の行政の仕組みや手続きに通じている申請者が多いともいえない。

政府側は「難民と認めたくても認められない人たちが多かった」とか、「犯罪者が多く含まれる」など、特定のケースを根拠に法改正を正当化しようとする姿勢が見える。

もともと事の本質は、さまざまに問題点を指摘されるような法案を、与党が政府提出法案として容認したことに始まる。その結果、与党はこの法案を通さないとメンツがつぶれることになり、よほどのことがない限り、抜本修正の姿勢に至らない。いまの公明党を見れば、その姿勢が顕著だ。要因は人道政策と治安管理を両立させるこの問題に通じたプロフェッショナルな議員が与党側に存在しないことに求められる。

もともと入国管理という治安維持の側面が強い政策と、人道的な難民政策という本来まったく別の指向性をもつカテゴリーの行政を、同じ外国人を扱う政策だからと一つの法律と行政組織にまとめてしまったところに、歴史的な安直さと制度的な欠陥の原因が指摘される。

難民認定業務を入管庁から切り離すべきという主張は従前から存在するが、今回そのことが如実に実感される事態だ。難民政策は人道の最たるテーマだけに、統治者側の視点だけでなく、申請者の立場からの、慎重な取り扱いを要する。

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