軍事的競争が復活する時代に

牧口常三郎が『人生地理学』を発刊したのは1903年10月15日。ことしで120年の節目を刻む。厚さ10センチ近くもあろうかと思われる初版の売れ行きはよく、重版が相次いだこの書では「生存競争地論」という章が設けられ、生存競争の様式が時代によって変遷することを指摘し、「四大区別」を具体的に列記した。つまり「軍事的」「政治的」「経済的」「人道的」の4つの時代区分だ。当時はまだ日清戦争に勝利してまもない時期で、第一次世界大戦も第二次世界大戦も行われていない。また日露戦争が始まるのは、初版が出て1年後のことだ。その時代に牧口はすでに「人道的競争の時代」を予見し、「すこぶる突飛になるがごとしといえども」と前置きしつつも、個人間においてそれはすでになされていると指摘し、国家間においても将来、定着していくとの見込みを活字化している。要するにそれは、自分の幸福・繁栄だけを考える生き方を否定し、自分と他者双方の幸福と繁栄を同時に行おうとするいわば「共存共栄の精神」から生じるものであり、その状態を牧口は「人道的競争形式」として指摘した。だがこの区切り方はその後2つの世界大戦をへて、政治的競争時代と経済的競争時代に移行したかに見えたが、21世紀に入ると、再び戦争が頻発。この日本においてもかつてないほどの戦後最大の防衛予算(軍事費)を計上し、このままいけば、世界3番目の軍事大国となることが想定されている。いわば「軍事的競争」が復活する時代にあって、牧口の理想と理念を実現すべき勢力がどこにあるのかは明らかだ。

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