今から振り返れば、火炎瓶を投げて殺人事件まで起こして日本を震撼させた政党を長年かけて「平和の政党」として日本社会にイメージ浸透させた元日本共産党議長・宮本顕治氏の手腕は大したものだった。一方で、ロシアのプーチン大統領は無謀な戦争に突き進み、いまや窮地に陥っている。その根本原因は、自らが権力者として耳にしたくない情報、自らの考えに邪魔となる情報を遮断するような態勢をつくってしまい、直言する正当な意見を吸い上げることができなかったばかりに、重大な局面で判断を誤り、取り返しのつかない結果を生んでしまったことだ。かつてソ連共産党の「兄弟党」を名乗っていた日本共産党も同様に、現在同じ轍を踏んでいる。同党の志位委員長が建設的意見を出版した党員2人を除名処分にしたことで、同党のイメージが急落している現状のことだ。宮本顕治氏がつくり上げたプラスの価値をもった「ブランド」は、志位和夫氏らの行動によって、見事に台無しになった。別の言葉でいえば、宮本氏がつくりあげたブランディングの功績を、志位氏らが見事に破壊した姿にも見える。
政党の成長にはブランディングは不可欠だ。「小さな声を聴く力」と主張しながら、日本国籍をもたない要するに選挙権のない人を置き去りにするようなことをすれば、それは言行不一致とみなされ、「ブレる政党」というイメージを重ねることになる。維新の会がいまだ成長を続けるのは、「ブレない政党」というイメージがうまくつくられていることが大きい。ブランディングは上記の日本共産党の例に見るまでもなく、それが虚偽の上に打ち立てられたものであっても、上手に行えば一定程度効果を発揮するが、それでもいずれは崩壊する。そのため政党は、自らの原点に、愚直に立ち返り、その行動を継続していくしか方法はない。
公明党でいえば、牧口常三郎が100年以上前に主張した「人道的競争の時代」を強く志向することであり、戸田第2代会長が唱えた世の中から一切の不幸をなくすという戦いであり、党創設者が示した「大衆のため」という指針以外にありえない。なかでも社会的弱者の視点に立つ姿勢は絶対的に不可欠だ。その重要な部分にブレや欺瞞が見られる限り、現在の公明党の“負のイメージ”が払しょくされることはないと思われる。問題の構造はシンプルだ。