安倍元首相ほど好き嫌いや評価の分かれた政治家も珍しいだろう。暗殺事件以来、この国の言論空間は安倍元首相を「宣揚」する論調で覆われ、批判的な評価を表明しようものなら「アベガー」のレッテルを貼られるようになった。右派お得意のレッテル貼りである。相手を敵と味方に二分して行う象徴的な論法で、戦前・戦中の「非国民」といったレッテル貼りと共通する部分がある。一方で安倍元首相の功績ばかりを強調し、負の側面にあえて目をつぶるか、「何の問題もない」と強弁する勢力さえいる。一般的に「アベ信者」と呼ばれるべきだろうが、ジャーナリストなどにもこの種の人間が多い。私は「アベポチ」と呼んでいるが、ジャーナリストとして是々非々ではなく、是々是々の立場を取るところに特徴があり、産経の阿比留記者などがこの範疇に入る。彼らは特定の政治主張に同調し、安倍氏に心酔する、平衡感覚を失った記者といえよう。