読売新聞の1面に「編集手帳」と称する朝日新聞の「天声人語」に該当する看板コラムがある。本日付の同欄で佐渡金山の強制労働問題に言及し、「韓国の主張は事実に反しており、受け入れられない」と書いているのを見て驚いた。なぜならこれは安倍晋三元首相や高市早苗現政調会長など自民党の極右勢力が裏づけなく行っている主張であり、根拠に乏しいと指摘されているものだからだ。実際、彼らと同調する主張を行っている産経新聞も、強制労働がなかったという主張の裏付けを立証できていない。せいぜい西岡某という専門家を登場させ、「一次史料を見よ」と漠然と主張させているだけで、どの一次史料の、どの点が強制労働がなかったという裏づけになるるのかまできちんと証明できていないからだ。もともと産経は自らの商売のために日中戦争時の南京大虐殺もなかったと裏付けもなく主張する反知性主義の新聞なので今さら驚くには値しないが、南京虐殺は「あった」と歴史的事実に即して報道してきた読売新聞が上記のような行為に及ぶと、ブルータスよお前もかという気に読者はならざるをえない。読売が本当に日本を代表する新聞の一つなのなら、「韓国の主張は事実に反している」と1面看板コラムで書いた証明を、自らの紙面で提示すべきだろう。私は日々全国紙には目を通しているつもりだが、読売が佐渡金山問題でそのような特集をしたのをこれまで見た記憶がない。