「山本七平賞」の権威にドロを塗った「門田隆将」

山本七平賞という文筆家にとっての賞がある。この第19回の受賞作品がパクリにまみれたものであった事実が明らかになっている。拙著『疑惑の作家 「門田隆将」と門脇護』においてもその一端を具体的に示しているが、受賞作となった『この命、義に捧ぐ』において、門田隆将こと門脇護は多くの引き写し行為を行っていた。その後、別の作品『風にそよぐ墓標』で同じ行為が問題とされ、裁判沙汰になって門田が完全敗訴したいわくつきの行為である。実は門田は裁判になった本以外の作品でも、多くの引き写しをしていたというわけだ。

『この命、義に捧ぐ』は2010年4月に集英社から刊行され、現在は角川文庫で継続的に販売されている。2010年の秋の授賞式で、選考委員からは次のように言葉が寄せられていた。

●山折哲雄「この仕事はたんなる秘話の発掘という水準を超えて、民族と民族、国家と国家のあいだに横たわる困難な課題を乗り越えていくための、新たな展望をわれわれに教えてくれる」

●中西輝政「著者・門田氏の粘り強い取材と考証によって、初めて確かなかたちでわれわれのもとに届けられた。歴史研究としても立派な業績」

●養老孟司「最後まで息も継がせず読ませる。事実を記録しながら、それができるというのは、並の力量ではない。(中略)本書は当然、授賞に値する作品」

いわば絶賛の中での受賞であったといえる。だがこの作品ではほぼベタともいえるほどの引き写し行為が随所でなされていた。作家として、そのような行為は容認されうるのだろうか。要するに他人の著作物をそのまま大量に使用拝借して自分の文章の中に埋めこみ、それで平然と受賞していたとなれば、それは作家本人の力とは言えなくなるだろう。イカサマといわれても仕方のない事態だ。

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