全体主義は共産主義だけの独占物ではない

本日付の朝刊で、アメリカのアカデミー賞でアジア系の女性監督として中国出身の女性が史上初の監督賞を受けたものの、過去に母国の中国を批判したことなどが原因で、中国国内ではそのニュースがまったく伝えられていないことが報じられていた。共産主義は独裁制に結びつくので、批判を受け付けない体質があるのは周知の事実だ。日本でも、日本共産党員の作家が過去に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したことがあったが、同じように党を批判した経歴があったことなどから、しんぶん赤旗などで報じられなかった例とまったく同じである。以上は、共産主義という政治体制のもとから生まれてくる必然的な現象のようなものだが、全体主義は何も共産主義だけの独占物ではない。過去の日本においても、軍部による独裁政治が行われていたことは明らかだ。このとき思想の根幹にあったのは、靖国主義である。近頃、この国の右派文化人が中国批判のあまり、共産主義だけが全体主義であるかのような言説を繰り返しているのを見るにつけ、自分自身のことがまるで見えていないのだなと感じられてならない。靖国神社を信奉する軍部独裁主義は、過去に、この国で「現実に起きた」ことである。一方で、共産主義の全体主義は、いまだこの国全体を支配したことは幸いなことにこれまで一度もない。

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