時空を超えてレイプを擁護する編集人

右派「煽情」雑誌が日本社会に生まれたのは2004年11月のことである。このとき創刊された月刊誌『WiLL』は、それまで存在した産経『正論』や文藝春秋『諸君』(すでに廃刊)と似た毛色の雑誌で、なおかつ洗練された誌面を思わせるのが特徴だった。編集長はそれまで何度も雑誌を創刊しては失敗させてきた花田紀凱氏だった。その花田氏が行ったことは、センセーショナルな歴史修正主義を特徴とし、この新たな雑誌では南京大虐殺はなかったといった主張を連載企画などで大っぴらに始めた。すでに学術的には決着のついていた問題を、一般大衆世界で蒸し返し、さらに売り上げにつなげようという魂胆がミエミエだった。その試みは、その後の2度にわたる同系統の思想をもつ安倍政権の出現と重なり、一定程度、成功したように見える(現時点に限った話だが…)。1937年に起きた南京事件は、多くのレイプ被害を伴ったことは歴史的にはっきりしている。さらに不法殺戮も万単位に及んだ事件だ。その被害が存在しなかったかのような言説は、右派サイドの中においてさえ極端なものであった。旧日本軍の罪責をゼロにするという点で、歴史的事実に対する反逆ともいえる。要するにファクトを第一優先にするのではなく、自らの政治的立場によってファクトを塗り替えるという非科学的な立場である。その立場は「時空」を超えて一貫しており、現在同人が編集している月刊『Hanada』では、あるレイプ事件で、加害者とされる男性を擁護する記事を何度も掲載し、被害者サイドからも「セカンド・レイプ」と指摘されている。加害者とされる男性は安倍首相を擁護する著作を何冊も出している人物だ。要するに、安倍応援団を自認する『Hanada』は、ここでも、政治的立場を優先してファクトを犠牲にしている態度にしかみえない。 昭和の戦争においても、そして現在においても、花田編集人の行っている行動は、悪い意味で一貫している。「事実」を第一優先にしない雑誌など、本来、ゴミ同然であろう。

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