月刊『Hanada』のやりたい放題に楔を打ち込む裁判

昨日は久しぶりに半日を裁判所の中で過ごした。記者にとって「図書館」「法務局」「裁判所」は取材調査の3種の神器のようなものだろうが、昨日はある裁判の尋問期日にあたっていて、所用を終えて駆け付けたのが昼過ぎという具合だった。裁判の内容は、朝日新聞社が飛鳥新社発行の『徹底検証「森友・加計学園事件」』を名誉棄損で訴えたもので、午前中に被告本人で著書の小川榮太郎氏、午後に花田紀凱Hanada編集長のほか、朝日新聞の西山公隆記者(当時東京社会部デスク)が証人として出廷した。

この裁判で朝日側は13の摘示事実を違法性のある名誉棄損に該当するとしている。問題となっている書籍では、書名のサブタイトルとして「朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」とうたっており、帯では「スクープはこうしてねつ造された」「虚報の連鎖」などと書き、キャッチとして「情報ギャング」と記し、本文でも「疑惑を創作した」などと断定的に記述している。この場合の疑惑とは、森友・加計学園事件のことだが、これらの表現が妥当なものかどうかが争われている。

私がこの裁判に注目しているのは、現花田編集長が前雑誌を立ち上げて15年ほどがすぎる今、同編集長が延々と行ってきた嫌中嫌韓路線、さらに朝日新聞への執拗な攻撃に対する一つの転換点となる可能性を予見しているからだ。さらに事実の裏付けが希薄なままに「戦後最大級の報道犯罪」や「疑惑を創作した」などと論敵に対して誹謗中傷する行為が、言論の自由の範囲内として許されるかどうかの判断に注目している。

「戦後最大級の報道犯罪」などの記述が、いずれも過去に週刊新潮が行った信平狂言事件に対する形容であればなんの問題もないものだが、朝日がスクープした森友・加計事件に根拠がないと考える者など、産経新聞などの一部の偏向記者を除いてほとんどいないはずだ。安倍首相という個人をどこまでも持ち上げたい一方当事者による罵詈雑言を、司法がどこで違法・適法のラインを引くのかに注目している。

次回最終の口頭弁論は10月21日に指定されたので、一審判決はおそらく来年の1~3月の間には出されるものと見込まれる。

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