高市首相の首相就任後の最初の予算委員会で、同首相は鳴り物入りで午前3時から勉強会を開始し、「本番」に臨んだ。だが、初日から「存立危機事態」問題を引き起こした。安倍首相以来、歴代首相が外交上あいまいにしてきた点を、高市氏は知ったかぶりの心情が強すぎるのか、具体的に述べてしまい、日中関係は最悪の方向に向かいつつある。あれだけ大きな国なので、巨大戦艦が一度カジを切ったらなかなか元に戻すのは難しいだろう。高市氏は早期に発言を撤回すればそれで済んだはずだが、それができなかったのは撤回すれば自らの支持基盤が持たないとの首相側の判断があったことが読売などで報じられている。要するに高市支持者の中心であるネット右翼(いわゆるネトウヨ)に慮った結果、中国は渡航自粛、留学自粛を立て続けに打ち出しただけでなく、これから経済制裁にも入りそうな勢いである。今後の日本の経済にどのような影響を与えるかは容易に想像がつくが、そのような「先行き」さえ見通す判断力のない人間が首相の椅子に座っている。同首相は首相になったら靖國参拝するというのが昨年総裁選の公約だったが、それが勝てなかった原因と見られるようになって、今回はその主張を封印した。さらに公明党の離脱交渉の中で、3本柱の一つが靖國問題であったので、それも多少の影響を与えているかもしれない。こんご、同首相が同神社に参拝すれば、日中関係は決定的に引き裂かれることになる。国家レベルの外交は、地域住民の問題と置き換えて考えればわかりやすい。お隣さんと仲良くできるかどうかという問題にほかならないからだ。首相の国会答弁は、相手にとってのセンシティブな問題を、相手に伝わらない形で配慮するのではなく、わかるような声の大きさで大声で述べたに等しい。近隣関係がうまくいかなくなるのは当然だ。要するに「配慮に欠けている」。予算委初日からこんな問題を引き起こすような宰相だから、今後もたびたび同じような問題を引き起こすだろう。先が思いやられる。
