高市首相が自ら引き起こした「存立危機事態」問題は、日本と中国の近代以降の歴史を浮き彫りにする。駐大阪総領事の発言を問題視し日本から追い出せと叫んでいるグループ、人間たちは日中関係を「戦後」のレベルでしか見ていないことが明らかだ。そこでは戦前の日本がやらかした「不都合な真実」が見事に抜け落ちているか、敢えて見ないようにしている卑怯さがある。近代において、日本は本当にひどいことをした。私は歴史の専門家ではないが、それでも日中戦争において日本軍が土足で大陸に押しかけ、罪のない民衆に何をしたかの一端はわかっているつもりだ。当時、文化的に劣っていた中国を蔑視し、軽く扱い、すぐに決着するとばかりに中華民国の首都・南京を陥落させた事実は、近年ではすぐに征服できると考えてウクライナに攻め込んだプーチンの行動を考えればよく理解できるはずだ。今のロシアはかつての日本の姿そのものだった。だが自ら始めた日中戦争はすぐに終わらず、泥沼に入り込み、果ては勝ち目のない対米英戦争にまで突き進んだ。それらの意思決定において、天皇は時の軍部にいいように利用されたに過ぎない。高市首相は、これらの時代精神とほぼ同じ精神性の持ち主と見られている。靖国信仰にこだわる姿勢がその証明だ。同首相のことを「危険極まりない人物」と見ている投稿は、XなどのSNS上でも多く飛び交っている。「初の女性首相」という点は歴史的に評価されるだろうが、それ以外に評価できる点は乏しい。今や「高市首相の存在そのものが存立危機事態」との主張が説得力をもって響くのは、熟慮の上の的確・適切な判断能力に欠ける、為政者としての最も重要な資質における欠陥を浮き彫りにする。この政権は1年持てばいいほうかもしれない。
