公明党と外国人参政権

外国人参政権が具体的な政治課題となったのは1998年の法案提出を嚆矢とする。公明党(厳密には分党時の衆院公明=新党平和)と当時の民主党による共同提出だった。現在、この政策に関する誤解を目にすることが多いが、公明党は国政選挙における外国人参政権を主張したことはこれまで一度もない。制度上の建てつけとして、もともと地方選挙に限った話である。憲法で国政と地方政治が分けられていることを踏まえ、国政選挙はあくまで「国籍」に基づくとの考え方がある。ただし住民サービスなど地域住民としてより密接に結びつく地方選挙権については、国籍に関係なく税金も日本人と同じように徴収されている外国人(外国籍住民)にも認めていいのではないかとの世界的趨勢に応じた対応だった。この場合、外国人のうちどのような人々を対象とするかという政治的判断が生じるが、当初の法案では永住権をもついわゆる「永住外国人」と定めていた。永住者には「一般永住」と「特別永住」の2種類があり、後者はいわゆる在日コリアンなどの歴史的経緯をもつ人々を対象とするが、当時は後者の数のほうが多かった。現在は前者が圧倒的に増えており、特に中国人の増加が著しい。当初法案では選挙権のみを付与し、被選挙権はとどめおくという慎重な内容だった。公明党側で中心的に汗をかいたのはすでに物故した冬柴鉄三氏(元公明党幹事長)である。兵庫の弁護士出身であった同氏は仕事を通じてこの問題に造詣が深かった。だが四半世紀以上の時間が経過し、時代は一変。外国人参政権を主張する者は「国賊」といった誤った風潮が作られ、昨年の兵庫県知事選でも対抗馬の女性候補が過去に外国人参政権を主張したなどのデマのレッテルを貼られ、落選した経緯がある。時代をいま一度「反転」させる必要性を感じる。

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